0820 今週読んだ本3冊
朝吹真理子『きことわ』
夢と過去、現実がないまぜになっている。また、貴子と永遠子の境界も曖昧だ。今語られているのは、誰の何なのかわからなくなる。その掴みどころのなさ、突拍子のなさがまるで夢のようだった。時間の過ぎ方は一定であるはずなのに、感じ方が違う。記憶がたしかなものか、誰も証明ができない。そんなたくさんの不確かを内包していた。
朝吹さんが、この小説を26歳の時に書き、芥川賞を取ったことをすごいと思う。すでに、スタイルが確立されていて完成されているという印象を受けた。私が思う芥川賞の受賞作ってこういう小説なんだよな、とも思った。
デビュー作である『流跡』も数年前に読んだが、よくわからなくて読みにくいはずなのに、なぜか途中で止められず読了したことを覚えている。前日から強い雨が降っていて、暗く肌寒い11月、ベッドでうつぶせになりながら読んだのだった。
こういう文章で物語を書けたら、楽しいだろう。
滝口悠生『死んでいない者』
登場人物があまりに多く、次々と出ては交じりあっていくものだから、相関図を何度も書き換えながら読んだ。故人は、ある者にとっての父であり祖父であり曾祖父である。葬式のために集まった一族は、各々の生活と人生、そして「視点」があるため、見る者によってその像は変わるが、そのどれもが正しくはないけど間違ってもいないのだと思う。
親とは、不登校とは、アル中とは。きっとこういう性格で、こういう暮らしをしていて、不幸でそれなりの理由があって、理由がないのだとしたら馬鹿で仕方のない人物である。確かめるまでもなく、そうあるべきだ!という思い込みを持っているということ自体を、捨てるその時まで気づけないものだ。実際に本人に聞かなければ分からないのに、あるいは、否定はしなかったから肯定したのだと、自分を信じきってしまう傲慢さは誰にでもある。
親族という遠くて近い関係の集まりは、事実と憶測と曖昧な記憶で絡まったまま続いていく。都合よくやっていく。この葬式前夜が、とくに記憶に残らない者もいれば、強烈に忘れられない者もいるかもしれない。
また誰かの葬式で集まるときに、誰が来て、誰が来なくて、誰がどう変わっているのかを、確認するのを繰り返すと思うと途方もないと感じるけれど、この多すぎる登場人物のひとりひとりを、また観察したいと思った。
高橋弘希『日曜日の人々』
私は、自分が思い込んでいたことに気づく。自傷、拒食、盗癖……そして自死。そういう行為をする人のことを「欠落している」と。しかし、この本を読んで思ったのだ。「欠落している」のではなく、「それが無くて完全」なのだと。
そもそも、欠落するというからには、もともとの完全な形があるわけで、それって人間においてどんな形だろうか。私はトイレマークのことを思い浮かべる。
その枠内になるべく綺麗に収まる人が「完全」で、なおかつ「普通」なのだとしたら。
もしも、その枠に自分の外側をむりやり合わせて、内側に大きな穴が空いているならば、本当はそんな枠なんて存在しないのだから、自由に自分の形を作ってその穴を埋めてもよいのだ。歪な形のまま、生きていてもよいのだと、誰かに認めてもらうでもなく、自分でそう信じられたなら、彼らの未来は変わったのではないかと無責任に思う。
誰もが歪で完全なまま、生きていけますように。
しばらく読書ができず、更新が滞っていました。忙しいとか疲れてるとかではなく、単純に読書欲がなくなっていただけです。今週ふと読めるようになったので、こうして紹介することができてよかったです。
元気ではあったという証明というわけではないですが、久しぶりに動画を出しました。これはかなり発作的なモチベであることが自分でも分かっているので、来週も出るかは分かりませんが、もし投稿されていたら見てもらえたらうれしいです。サムネを明るい感じにしたのもなんとなくですが、可愛くて気に入っています。
さらに、noteで日記の投稿もしています。仕事帰りに地下鉄に乗ってる時間があるんですが、その時って電波が悪くて何もできないんですね。その15分くらいで暇だなぁと思ったので始めました。仕事があれば平日必ず同じ環境下になるので、続けられるんじゃないかと思っています。とはいっても、満員すぎてスマホ触れない日とか、飲みに行って帰りが遅い日とか、誰かと一緒の日とか、欠勤した日とか、もちろん休日には更新しなくてよいとしています。こちらもよかったら。
つまり、今の私はかなり余力があり、よいバランスで大丈夫にやれていて、すべてもやりたくてやっているので安心してください。私はちょっと頑張るとなぜか心配されてしまうのですが(たぶん波があるから)YouTubeやレターをしれっと休んで勝手に戻ってきて、マイペースにできるようになったので大丈夫です。
ということで、今日のレターはだいぶ長いかと思うけど、最後まで読んでくれたのならばありがとう!このレターには返信機能があるので、よかったら感想を聞かせてくださいね。それではまた。
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