#5 切実読書週報

文藝冬号『てづから』『成るや成らざるや奇天の蜂』感想/最近読んだビジネス書4冊/#本読む私たちトップバッター発表&続報
切実@書店員YouTuber 2022.10.16
誰でも

こんばんは、切実です🦆今日もレターを開封してくれてありがとうございます!みなさんはどんな1週間でしたか?わたしは、今週も本をモリモリ買い、そしてドンドコ読みました。なので、今回は読書感想文回となっております。

まずは、文藝冬号から、「カワイイはパスポートなんですよね。この国のパスポート。」可愛くて子供っぽいものを過剰に嫌い、雑味がなく年相応なものを愛する主人公の『てづから』(王谷晶)、麻薬中毒者たちがロロクリで好きな動物になる『成るや成らざるや奇天の蜂』(金子薫)を読みました。

続けて、藤井アナこと藤井貴彦『伝える技術』で準備の大切さを、中村圭『説明は速さで決まる』で短く分かりやすく伝えるための技法を、阿部広太郎『心をつかむ超言葉術』からは誠実に言葉と仕事と向き合う覚悟を、共感・愛着・信頼を高めて常連さんを大切にすることを佐藤尚之『ファンベース』から学びました。

それぞれの感想を書いているので、選書の参考になれば幸いです📚

前回のレターで募集した『#本読む私たち』へのご応募ありがとうございます!トップバッターの方と初回配信日が決まりました✨レターの最後で発表するので、ぜひ最後までお読みいただけるとうれしいです😌💕

それでは今夜もよろしくお願いいたします!

***

王谷晶は去年の文藝秋号の「怨」特集に載っていた『この月がお前を照らすと言うのなら』を読んで「ギャ〜!オモレ〜!!」と思ったのですが、そこから王谷さんを追うことなく一年…。今回の文藝冬号に名前があることに気づいて真っ先に読んだ『てづから』も例に漏れず「ギャ〜!オモレ〜〜〜!!!」だったのでご紹介させてください🙋‍♀️

この小説の特徴は固有名詞の多さ!出てくるモノたちから、所有者の人間像が浮かびます。主人公は、カワイイものや子供っぽいものを過剰に嫌う女性。おそらく20代後半です。おそらく、というのは彼女を取り巻くモノたちが、ナノユニバースやZARA、無印良品にトリンプだから。

主人公は職場の休憩室や更衣室に置いてある‘作品’を見てはいけないものとして過度に恐れています。その‘作品’とはヤクルトのふたとかドラッグストアのチラシとかで作られた「竹林にいるパンダ」を表した工作とか、ちぎり絵で作られたひまわりだとか。作ったのは「いつもの薄ピンクの作業着に見るからに手編みの歪んだニット帽を被って」いるシルバー人材で入った掃除の烏山さん。主人公は烏山さんがしゃべったり声を出しているところは今まで一度も見たことがありません。

ここまでは、ちょっと神経質な女性が、おばあちゃん職員のやることなすことが気に食わない感じかな〜と思うのですが、読み進めると主人公が異常なまでに「カワイイもの」「幼稚なもの」を嫌悪していることがわかります。

たとえば、女子高生のカバンに付いたサンリオのキーホルダー、スーパーの丸っこい字で書かれた手書きのPOP、商品パッケージにあるデフォルメされた魚や肉(「生前の姿」と主人公は言う)のイラスト。実家の玄関にあるお母さんがカルチャースクールで作ったペットボトルに紙粘土をくっつけて作った人形、おばあちゃんが編んだ小豆色のノブカバー。主婦の集めるムーミングッズ。そういうものをいちいち発見しては「醜い。カワイイものが飽和しているこの世は醜い。」と言います。

ある日、休憩室に新たな‘作品’が置かれていることに気づいた主人公は、ついにその‘作品’を勝手に捨ててしまいます。その三日後くらいに、烏山さんが無断欠勤していることを知った主人公は、自分が‘作品’を捨てたことが関係しているのかもしれないと焦り、烏山さんの家に向かいます。SHIROの練り香水をつけTHREEのリップを塗って…。

というあらすじ(にしては長いな)なのですが、凄まじいのは烏山さんちの描写。読んでるだけで、おばあちゃん家特有の雑多で無造作で凝縮されたお香のような埃のような筑前煮のようなにおいがブワッと漂ってくる気がしました。主人公もその圧力のようなものに負けまいと、ヤクルトの空容器で作られた小さなロボットみたいなものとかに囲まれながら、「こういうものは、子供のものでしょう。」と、烏山さんに向かって最後には半狂乱状態になる主人公。どうしてそこまで「カワイイ」を恨むのか、主人公にとって「カワイイ」とはなんなのか。勢いのあるイマっぽい小説でとっても面白かったです。

続けて読んだのは金子薫『成るや成らざるや奇天の蜂』麻薬中毒者が蔓延る<奇天座>という建物で、ロロクリという幻覚剤を売り歩く蜂の道化プルチネッラをめぐる住人の物語。奇天座にある<花畑>というバーでは動物の仮装をした異形のものたちがプルチネッラを待ちながら、いろんなクスリで思い思いに幻覚症状を楽しんでいて……。という感じで、終始「幻覚か現実か?」その曖昧さを楽しむような物語でした。このまま色々煙に撒かれる感じで終わるのかと思ったけど、ちゃんとプルチネッラとは何なのかは明かされたのでよかったです。<奇天座>は阿片窟とか九龍城とかそういう外観で想像してました。

そうそう、今回の文藝には文藝賞も掲載されているから読まねば!

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めずらしくビジネス書を読みました。4冊も読んだので、ここからは各本から「ホアー!」と思った文章を引用します。(電子だからページ数がわからないのだった…)

ものの成り立ちがわかれば、努力の仕方が見えてきます。できない理由が解明できた時には、その後、飛躍的な成長が待っています。苦手なものに真剣に取り組むほど、実は大きなメリットがあるのです。

手元にある安易な言葉で、ご自身を包まないように。

本当にその言葉でいいのか、もう一度考えよう。
誠実さを持って、相手のことを徹底的に調べる。この当たり前のことをやり切ること、そこから自分なりの感動を見つけることで、いい企画は生まれる。(中略)ここぞと言う時は120%で返そう。相手の期待を遥かに超えることができたら、それは感動としてずっと残る。
誰かなんていない。自分の一番のお客さんは自分。自分の気持ちを置き去りになんてしない。
才能とは、掛けた時間だ。自分なりの考えを持って、諦めることなく言葉と向き合う。
あらゆる接点でファンは見ている。つまり手抜きも不誠実もすべて見られている。唯一の対抗策はすべての施策・接点・活動において、誠実であることだ。
それは誠実なやり方か、自分に問いかける。

文章力とか伝える力を学びたくて読み始めたのに、気づいたら「誠実であるか」とか「一生懸命にやってるか」とかそういうマインド面に影響を受けてしまったわけですが。ちょっと気を抜くとすぐに決意表明的なことをしがちな私なので、今日はちょっと記事が長いのでここはグッと堪えて、読んだだけで終わらせないで切実さんの活動に還元して行こうと思いまっす!アッス!!オナシャス!!!!!

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#本読む私たちがスタートします🛫

前回のレターでご応募いただいたみなさん、ありがとうございます!1週間で11人もの方から応募がありました。1人ずつ順番にお選びいただいた手段でご連絡していきますので、お待ちいただければと思います。

「#本読む私たち」は毎週木曜日の投稿となります!

今まで通り日曜日の配信では「切実読書週報」をお届けします。インタビューはそれだけでじっくり読んでいただきたいので別日の配信にしました。と、いうことで……

トップバッターは10/27(木)配信!お相手はミヤビ🌙読書垢さんです!

今、絶賛インタビュー中ですのでお楽しみに👀

今回、年齢制限を設けさせていただきましたが、慣れてきたら制限解除しようと思うので、お兄様お姉様のみなさんも肩を温めておいてくださいませ🙇‍♀️❗️

30歳以下のみなさんからの応募は今も受け付けております。11人待ちなので年末〜1月の連絡になるかもしれませんが、ほどよく忘れつつお待ちください📮

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今週も最後までお読みいただきありがとうございました🌝

いつもマシュマロやメールの返信くれてありがとうございます!どちらも読ませていただいて、マシュマロはTwitterで返信してることもあります!

それでは、また次回のレターでお会いしましょう!以上、切実でした!

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