1008 今週読んだ本3冊
こんばんは、切実です。秋ですね。秋、あるじゃん。つい10日前まで汗だくで過ごしていたような気がするけれど、今日はすっかりカーディガンを着ています。でもまだ扇風機は出しています。関東は20度前後ですが、もう暖房入れたよって人もいるのかしら。
久しぶりのレターとなってしまいました。文章を書くことは好きなのに、どうしてもYouTubeやラジオで手いっぱいというか、「もうわたしから出せるものはない!」という気持ちになってしまいます。今回のレターの最後では、「切実会議2023秋」として、動画・音声・文章それぞれの発信をどう回していくかを考えていますので、興味のある方はぜひ最後までお読みいただけると幸いです。
今週読んだ本
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斜線堂有紀『本の背骨が最後に残る』
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夏木志朋『二木先生』
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高原英理『祝福』
7つの短編集。痛くて悍ましくて惨たらしくて救いのない話ばかりなのに、読むのをやめられない引力があってめちゃくちゃ面白かったです。硬質な文章に妖しさと美しさがあって、読んでいて世界観にグングン引き込まれていきました。やっぱり有名で話題な作家はそれだけの理由があるな、読んだ方がいいわ。(毎回言ってる)
どの短編も好きだったけど、『死して屍知る者無し』『金魚姫の物語』が特に印象的でした。
『死して屍知る者無し』は、転化(てんげ)と言って、人間はいずれ動物になるという風習?があって、歳を取ってからなる人もいるし、ひどい病気に罹ったことで起こる人もいて、でもいつか必ずみんなに起こることなんです。なんの動物になるかは本人が決められて、動物に転化したあとは動物として働いてコミュニティに貢献する、それが幸せなこととされている、そんなコミュニティで暮らす女の子くいなの話です。くいなは自分は兎になりたいと思っているんだけど、好きな男の子のミカギは「ロバになりたい」と言っていて、でもそしたら動物になってから一緒にいられないから、説得して一緒に兎になる約束をします。ですが、その三日後、転化が起こったミカギは兎じゃなくてロバになっていて……というところから、さらに物語は二転三転していく。最初はちょいファンタジー?とすら思ってしまったんだけど、なんてこった!めちゃくちゃホラーでした……。
『金魚姫の物語』は、その人の上にだけ雨が降るという「降涙」(こうるい)という不治の病があって、罹患すると最後は水死体のようになって死んでいく病が流行した世界の話です。その病気に罹ってしまった美しい女性の憂を、写真に収め続ける男子学生雨宮くんの話。憂がどんどん変わっていく様子が仔細に映されていて、読んでいるときずっと私の上にも雨が降りしきっているような、じっとりとした寒さと鬱陶しさがあって、飲み込まれるように読みました。ラストは好き嫌いあるかと思うけど、わたしはこれでもいいんじゃないかなって思っています。
ずっとイタくてハズくて読み飛ばしたくなった。俺は普通じゃない。特別な自分のまま「普通の感覚」をを理解してやりたい。俺が特別だと認めてもらいたい。そんな田井中と「普通に見える」二木先生の歪な関係。瘡蓋を何度も剥がしにかかる容赦ない展開にひりついた。
こういう装丁の本(推薦コメントがうるせ~やつ)って避けがちなんだけど、発売当初からしょっちゅう本屋で目に入ってきていたので、ついに買って読んでみました。
何をしゃべっても「イタイ奴」と笑われる実際イタイ奴な田井中が、普通の美術教師の二木先生に「ヤバい秘密」を脅しに使って突っかかっていく、歪な関係のはなしです。最初はもう田井中のあちゃ~感が目も当てられず、読むのを挫折しそうになるくらいだったのですが、ずっと全力でイタタ~な感じがだんだん癖になってきて、一気読みでした。
二木先生も学校では普通の爽やか美術教師として生徒から好かれていて、何一つそつなくやってきたんだろうなと思うんですが、田井中といるときは教師を”演じる”のをやめて雑で投げやりな感じになっているのがリアルでした。誰だって一つの人格で生きてないし、別の人格がすべて「善」であることもないし、全人格を外に出す必要もないよなって思いました。
田井中を執拗に”いじって”くるクラスメイトの吉田も決して無視できないキャラで、自分がカースト上位にいる気持ちよさにしがみつく狡さと弱さ、持っている正義感が本物だと信じて疑わない傲慢さから滲む嫌なタイプの一軍男子感がすごくて、出てくるたびに「こいつめっちゃ嫌いだわ」とキリキリしました。ほかにも、田井中のお母さんや同級生の委員長、委員長のお父さんなど、ちょっと出てくるキャラたちも「そうだよな、その立場の人ってその振る舞いするよな」感があって、読み応えがありました。
二木先生のヤバイ秘密が何なのか?!ばらされてしまうのか?!を楽しむ作品と言うよりは、田井中がどう変わっていくかとか、垣間見える二木先生の本質の部分見て、なにか感じることがあるんじゃないかなと思います。
やっと読めました。高原先生の新刊です。高原先生なんだから幻想文学だろう、と思ってる部分がありますが、これはちょっと幻想文学というジャンルではない気がしました。なんというか、『遠野物語』的な伝記集?説話集?っぽさを感じながら読みました。
ある言葉をめぐる時代も登場人物も違う連作…連作というのともまた違う気がしますが、少しずつ関わりのある9つ短編集が収められています。
1作目の『リスカ』では、リスカ癖のある女子高生がブログをやっていて、そこに書かれている言葉が、5作目の新興宗教の話である『目醒める少し前の足音』や、7作目『かけらの生』に繋がっていく。誰かの言った言葉が自分の言った言葉にされていたり、誰も発してないのに耳に突然聞こえてくる言葉があったり、何の目的か分からない言葉を暗唱させられるまで教え込まれたり、物語の中では言葉が行きつ戻りつ、放たれ繋がり巡っていく。その途方もなさを思い、この作品の題名が『祝福』である意味を考えました。
好きだったのが、5作目の『目醒める少し前の足音』の選考のシーンで、連想する言葉を答えさせられたりとか、難読漢字(わたしにとっては難読だったけどそこに意図はないかも)を読まされるとか、その意味の分からなさと淡々と進む空気感が、ちょっとボカロっぽいと思って好きでした。ボカロって言葉を音に乗せたものを発する機械だから、初音ミク自身に感情はないじゃないですか。(ここは人それぞれ言い分があると思うけど一旦飲み込んで聞いてください)でも、機械にその言葉を発させたのは人間で、それはみんなもちろん分かっていて、機械を一枚噛ませて言葉の重みや切実さを中和させることで、言葉だけが素直に入ってくるから良いっていうのがあると思っていて。
この物語に全然そんなボカロ要素なんてないし、読んでいてわたしの思考が飛躍しちゃってるだけだと思うので、それをあてに読まないでいただきたいですが、言葉と音についてそんなことを思う読書でした。
切実会議2023秋
10月から平日21時に『切実ラジオ』の配信が始まりました📻過去何度かやっているラジオですが、今回は雑談に振り切ってまったく本の話をしていません。雑談も地味に人気があるのと、読書量が多くないのでそんなに本の話できないなと思って、その時考えてることや最近起こったことについて、自由にしゃべっています。
しゃべることで誰かを楽しませたり休ませたり、大層なことを言うと居場所を作れたらいいなと思うんです。ラジオを聴く時って一人じゃないですか。誰かとワイワイ言いながら楽しむコンテンツじゃないですよね。「一人だけど独りぼっちじゃない」パーソナリティがしゃべって、同じラジオを聴くリスナー仲間がいて、でも直接つながる必要がない安心感ってラジオしか出せないと思うんです。
このラジオは、たくさんの人に知ってもらいたい!聴いてもらいたい!ものではなく、見つけてくれた人が何度も、ずっと聴いてくれるようなものにしたいです。切実さんという一人の人間が、みんなと同じ時代を生きて、普通に働いて恋愛してメルカリの誤配送に翻弄されているさまを(どんだけ根に持ってんだ)共有できたらと思っています。
YouTubeの動画投稿は、月末の『今月読んだ本』のみにしようと思っています📚企画とかvlogとか何度か撮影してみたんですが、どうしても納得がいかなくてお蔵入りしまくっています……。自分で納得いってない捨て動画みたいなものをYouTubeに出すのは許せなくて、結果悩まずスッと撮れるのが『今月読んだ本』だけなんですよね。なので、動画投稿はムリせずこの一本だけは毎月出して、他は出せたら出すくらいにしようと思います。
そしてこのNewsLetterをやっぱりやっぱり頑張りたい!!!!!ちょっと気を抜くと平気で1ヶ月更新していないこともザラにあるこのレターですが、せっかく1000人以上の方が登録してくださっているのに、この適当さは耐え難い!良くない!そう思っています。
今までは週末に動画を撮って力尽きていたのですが、動画を月末だけにすることでレターにコミットできると思っているのと、前からちらちら言っていたZINE作成に取り組むためにレターを使いたいと目論んでいます👀
ZINEでは、日記と読書と+αをわたしだけの世界観で作ったもの残したいと思っています。来年の文フリに出すかとか、具体的なことはまだなにも決めてないんですが、「切実さんだけのものが欲しい」というお声をいただくことも多いので、やってみたいなと。
そのための下原稿的なものを書いたり、あるいは購読者の方にアンケート取ったりして、ZINEの制作過程をこのレターで共有したいと思っています。
そんな感じで、切実さんはここから「ラジオ」と「NewsLetter」を頑張って、来年のどこかでZINEを出すことが目標です✨
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今日のレターも最後までお読みいただきありがとうございます。これからも楽しく頑張っていきますので、「やってるやってる」と見守っていただけたら嬉しいです。いつも応援ありがとうございます!それではまた来週!
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